北アルプス・剱岳 チンネ&剣尾根

日程 2007/8/11(土)〜14(火)
山域 北アルプス:剱岳 チンネ&剣尾根
ジャンル フリー
メンバー M.Su、T.J、他1

記録

今年は剱岳で夏休みを過ごすことに。よく行くジムの常連どもには「山岳会の夏合宿みたいだね」って言われた。そのとおりです。山岳会員ですから。

室堂の喧騒を離れ、剣沢小屋前の喧騒に。ボルダーやってるバカもいる(俺だ)。生まれも育ちも遠いが、この辺にいる悪そうなやつはだいたい友達。剱はやっぱしかっこいい。

1日め

長〜い長次郎谷を登り返して、着いたところは楽園でした。

ああ、ここは僕が夢に描いていた理想のベースキャンプ。すごいぞ、本当にあったんだ…。

花々がいまをさかりと咲き誇り、湧き出る雪解け水は心までも潤してくれる。

山のはに消えゆく夕映えを瞳に映し出せば。やがて夜の帳に満点の星々が、ロマンを語る沈黙に耳を傾ける(ジェットストリーム)。こりゃたくさん人が来るわけだ。

2日め

そして翌日。メインプランは剣尾根。さんざ「絶対日が暮れる」などと脅かされてきたので、3時起床のはずが起きてみたら4時半。まあいつものことではある…。  あっさりと行き先をチンネに変更。すでにぞろぞろと雪渓を登ってゆくヘッドランプの列が見える。ガレの池ノ谷ガリー、三の窓をへてチンネへ。すでに朝日も昇りきり、左稜線には行列ができあがっている。2ピッチ目のテラスは満員。しかし、今回の目当ては左下カンテってやつであるからして、あわてることはない。案の定、左稜線以外にほとんど人影はなかった。  なんだかトポと違うようだが、スッキリした垂直フェイスに目が止まり、まあ何とかなるだろうと取り付いてみた。

小さいコーナーから垂直のフェイス。
傾斜がゆるくなり30メートルでレッジ(X級くらい?)。

右上するコーナーから草つき混じりのうすかぶりフェイス、バランシーなカンテを回りこんで50mいっぱいで這松テラス(X−)。倒れ掛かるようなまな板岩をレイバック、這松をちょっと掻き分けてかぶったカンテをのっこすと明るい三角テラス(W)。支点は少ないがV級くらいのカンテを登ると左稜線の直下に出て、2ピッチほど左稜線のリッジ(W)を登り、中央バンドに懸垂で降りる。

今回紅一点のミポリン。

クライミング始めて2年目なのに、だまされてこんな得体の知れないルートに連れてこられてしまった。「どこ登ってきたの?」と聞かれても「よくわかんな〜い」としか答えようがない不幸。

この青い空、空間に飛び出していくようなこのクライミング。

ふだんは冴えない相棒も見違えるよう。さすがいい山だ。

う〜ん、ここまでトポとまったく整合しない。ここはなにルートだ?中央バンドは広々としていてビバークもできそうだ。左稜線を登ってる(≒待ってる)人たちから丸見えで視線が痛い。あいつらはなにやってんだ?集団の和を乱すな。あ〜自意識過剰ですかね。

ナイキのシューズやら古い使い捨てカメラとかが落ちている。「こ、これはマロリーのカメラか!?」とは一瞬たりとも思わずに無視。休憩後、左方カンテを登り始める

コーナーからちょっと悪いカンテに出てまたコーナーへ。

ハング下の狭いレッジまで30m(X)。いよいよ核心のハング。オンサイト狙いの人は読み飛ばそう。いないか。まあなかなかアルパインではお目にかかれないムーブ(X)で超えて、なんでもないバンドを登って左稜線にふたたび合流。2ピッチほどロープを出してチンネの頭に到着。

この開放感がたまりません。かっちょいいぜトモヤン。
今回のオバカパーティーfuturingミポリン。かっこつけすぎだぜトモヤン!

下山後、登山大系をひもといてみると、登ったのはどうやら「左稜線下部ベルニナルート」っぽい。でもやっぱりよくわからないのだった。

3日め

3日めはちゃんと3時に起きました。体調不良のミポリンをテントに残して池ノ谷ガリーを三の窓からさらに下っていくとでっかい岩壁が。これがドームかな〜。二人とも初めてなのでさっぱりわからない。R7くらいから上がろうと思っていたが案の定どれがどれなのやら。またも適当に登り始める。

これがR?(あとで判明するが)。

ルンゼをつめてちょっと悪いチョックストーンの涸れ滝をロープを出して越える。落石が多くてトモヤンの腕を直撃して焦った。たいしたことはないので続行、小さなコルから左へ切り返してまた浮石の多いルンゼへ。

そしてこれがR?。

やっと尾根上に出て、ど〜んとでっかい「門」の岩場のまん前に出る。おりょ?ここは…R6のコルでした。どうやらR5からR6を通ってきたようです。出だしのA1のピッチをフリーで登る、というのが今回の目論見だったのだが、核心部を通り過ぎてしまった。残念だな〜(ラッキー♪)。

さて、「門」である。はじめバンド奥のコーナー(X)を試してみたが、あまりにも悪い。でっかい石が浮いているのが見ただけでわかる。途中から引き返して、これもA1のついたクラックを登ってみる。カブリ気味だが、フリーでも5.7くらいかな。V級くらいの左上バンドを登ってテラスへ。短いスラブを越えて浮石のルンゼ(またあ?)をちょっと上がればコルB。難しい場所は終了である。登山靴に履き替え、主稜線を目指す。

 まだ遠い主稜線を眺めて。

ところどころロープを出しつつ、これでもかと現れる岩峰を越えていく。少々もろいが特に問題はない…はずが、けっこう変な垂壁とかを登ってしまう。アホだ。やっと長次郎の頭に到着。

ぐったりと大休止。イワツバメがビューンと風を切って通り過ぎてゆく。

日没まで余裕を残してBC帰着。一日家政婦のミポリンが干しておいてくれたシュラフはおひさまのにおいが…しない。自分の汗のにおいだった。

4日め

4日め、泣く泣く我が家(そう決めたんだも〜ん)を離れ、剣沢小屋でトモヤンにコーラをたかったりしながら下山。

 

聳え立つ灰色の岩峰、時々の陽光に輝く雪渓。そよ風に揺れる花々、またたく満天の星。夜が明ければ、空へと連なる岩場にひたすらかじりつく。快晴が続いて、夏山の魅力のすべてを凝縮したような四日間。またここに還ってこよう。またいつか。長次郎雪渓の上まで荷物を(できれば俺も)運んでくれる誰かが見つかったときに。

Word : Suga/Photo : Tomoyan

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